出生前診断とアトピー 【女医として、母として伝えたいこと】

出生前診断

医師として働きながら、アトピー性皮膚炎を経験したはる子。
当時は夜も眠れないほどのかゆみや、周囲の視線に苦しんだ日々は今でも忘れられない。しかし、試行錯誤しながら自分の体と向き合い、医学的な知識も活かしながら、最終的にはアトピーを克服することができた。

そんな私が一人目を妊娠したとき、実は胎児は18トリソミーだった。もしかしてアトピーだったから何か関係があるのか?そんな不安があった。頭では直接的な関係はないとわかってはいるが、自分が健康!と自信をもって言えなかった私はそんな不安を抱いてしまったのである。
さらに、「自分の子どももアトピーになってしまうのではないか?」ということも。そして、この不安をきっかけに「出生前診断」について深く考えるようになった。

出生前診断とは?

出生前診断とは、妊娠中に赤ちゃんの健康状態を調べる検査のことを指します。さっとであるが主に以下のような方法がある。(詳細は割愛しています。)

  • 精密な超音波検査:精密超音波機器により、胎児の情報を可能な限り正確に知ることができる。この検査ができる医療者は特別なトレーニングを受けている。一般的な産婦人科健診での超音波とは異なる。
  • 非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT):妊娠10~16週に採血を行い、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミーについての可能性(陽性、陰性、判定保留)を調べるスクリーニング検査。
  • 羊水検査・絨毛検査:診断を確定する検査。羊水や胎盤の一部を採取するため少々侵襲的な検査にはなる。

この検査を受けることで、染色体異常(ダウン症など)の可能性、さらには出生前診断クリニックによってはすべての染色体異常の有無が調べることができる。しかし一部のアトピーやアレルギー疾患のような遺伝的要素が関与する病気や発達障害など、現時点では出生前診断で心配事すべてが確定的に知ることはできない。

私が抱いた葛藤

妊娠が分かったとき、私は嬉しさと同時に、「もし自分の子どもがアトピーになったら…」という強い不安に襲われた。アトピーは遺伝的な要因も関係すると言われている。でも私の家系でアトピー性皮膚炎の人はいなかったのである。

そこで、出生前診断について真剣に考えるようになった。しかし、アトピーは環境要因も大きく関与する可能性もありつまり、仮に出生前診断で何らかの遺伝情報を知ったとしても、「この子がアトピーになるかどうか」を完全に予測することはできない。

「知ること」の意味

出生前診断は、「事前に知ることで準備ができる」というメリットがある。しかし、その情報をどう受け止めるかは、人それぞれ。

アトピーに関して言えば、たとえ遺伝的な要素があったとしても、適切なスキンケアや生活習慣の工夫で発症リスクを下げることは可能と私は考える。実際、私もアトピーを克服するまでに多くの試行錯誤を重ね、その経験があるからこそ、我が子のためにできることもあるのではないか、と考えるようになった。

私が選んだ道 ~18トリソミーだったわが子~

最終的に私は、出生前診断を受け異常がないと分かった時点で産みたい、と思った。その理由は、病院勤務時代、いわゆる染色体異常をはじめとした重症心身障害児と呼ばれる子供たちと接してきた経緯があり、そのご両親の姿を鮮明に覚えているからである。

彼らは本当にすごい。主治医よりよっぽど自分の子供のことを把握している。想像を超える感情を乗り越え、たくましく生きている姿に尊敬しかなかった。
私が同じようなケアを同じような状況になってできるのか?と考えると、正直、、

自信がなかった。

実際一人目は18トリソミーと絨毛検査で診断がついた。ものすごい衝撃だった。どういう病気なのか、予後や無事に産まれてきてくれたとしてどのようなケアが必要なのか、知識があるがゆえにリアルに想像ができ恐怖を感じてしまったのである。

これから赤ちゃんを迎える方へ

妊娠中は、様々なことに不安を感じる。特に、アトピーやアレルギーの家族歴があると、「この子も同じように苦しむのでは…」と悩むこともあるだろう。でもここで言いたい。
母親がアトピーだからと言って子供が必ずそうなるとは限らないし、母親の毒素が子供に移ったから、などという事実も医学的にはないのだ。実際私の息子はアトピーはない。

しかし、私自身の経験から言えるのは、「たとえアトピーになったとしても、克服する道はある」ということ。そして胎児が望まない状況であっても医療や周りの人に頼りながら生きていくことは可能なこと、適切な知識とケアがあれば、症状を最小限に抑えることも可能だということである。

出生前診断を受けるかどうかは、個々の価値観や状況によって異なる。ただ、どんな選択をするにしても、「自分が納得できる決断をする」ことが大切と思う。そして、どんな結果を選択しても私はそれが正解だと思う。

私自身も、母として、医師として、これからも学び続けながら、子どもと向き合っていきたいと思っている。もし同じように悩んでいる方がいたら、どうか一人で抱え込まず、信頼できる人に相談してみてほしい。少なくとも私はあなたの選択を絶対に否定しない。

あなたと、これから生まれてくる赤ちゃんが、健やかに過ごせることを心から願っている。

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