Threadsに投稿したコラム(※実話です。)
マッチングアプリで出会った相手が、まさか不動産と節税の勧誘目的だったとは──。
当時の私はアトピーで恋愛どころではなかったが、年齢的にそろそろ…と始めたアプリで、5歳年下のややイケメンとマッチした。
最初は普通の出会いかと思いきや、待ち受けていたのは節税トーク、謎の高級焼肉会、そして“ワニ使い”との邂逅。
どこからが勧誘で、どこまでが本気だったのか?いま振り返れば笑い話だが、少し間違えば面倒なことにもなりかねなかった。
この記事は、実際にあったやりとりを元に記録した全6話の体験談である。
マッチングアプリに潜む“違和感”を見逃さないためにも、ぜひ参考にしてほしい。
第1話:始まりはドトールから
あれは30代に差し掛かった頃だっただろうか。
当時アトピーで苦しんでおり、出会いどころではなかったが、年齢も年齢だしさすがに危機感を覚えた私は、意を決してマッチングアプリを始めてみた。
とりあえず会ってみなければ分からない、という精神で、持ち前の行動力を武器に5歳年下のややイケメンとマッチした。近くのドトールでお茶をすることになった。
彼は餃子の◯将の店長をしており、普段は店頭に出ているため、会えるのは夜のみ。待ち合わせ時間は夕食後の遅めの時間帯となった。
会う前のチャットでは、私はあえて自分が医師であることを伝え、相手の反応を観察していた。彼は「自立した女性が好き」と語り、仲良くなったら家に遊びに来てほしいなど、積極的な印象を与えていた。
にもかかわらず、実際に会った瞬間に彼が放った第一声は、予想外のものだった。
第2話:初対面で「節税に興味あります?」
いよいよ、餃子の◯将店長ややイケメン男性(以下、餃子と呼ぶ)との初対面の日が来た。
顔面にもアトピーの症状が出ていた私は、心のどこかで「ゾンビ扱いされたらどうしよう」などと不安を抱きながら、待ち合わせ場所へ向かった。
いた。やはりややイケメンである。
「餃子さんですか?はじめまして、はる子です」
先に来ていた餃子が顔を上げる。
「あ、はる子さんこんばんは。どうぞ座ってください。ところで、節税に興味あります?」
挨拶の代わりのように発されたその一言に、私は驚いた。
え?節税…?
実はちょうど節税について調べていたタイミングだった私。情弱とタイミングの良さ(悪さ?)が相まって、話はトントン拍子に進んでしまった。
「今度、知り合いの不動産屋と一緒に節税について教えてあげるよ!」という話になってしまったのである。
内装写真を送り合ったり、「テレビ大きいね」などと話していたあれは一体何だったのかと思いつつ、特に惚れてもいなかった私は、完全に節税トークに飲み込まれていった。
第3話:ワニ好きな不動産屋と焼肉へ
餃子との節税トークの流れで、彼の“上の人”にあたる不動産屋(以下、棟梁と呼ぶ)を紹介されることになった。どうやら餃子と棟梁はタッグを組み、マンションを購入させるスタイルらしい。
当時の私はそれに気づかず、「どんなマンションを紹介してくれるのだろう?」という軽い気持ちで会うことにした。
彼らは私の家の近くまで迎えに来てくれることになり、家バレしない程度の距離で彼らの車に乗り込んだ。(この時点で多少の危機感はあったが、特に身の危険はなかったのが幸いである)
到着したのは高級焼肉店。もちろんご馳走されるつもりで入店。結果として、料理はとても美味しかった。
店内では節税の話が続いたが、私はほとんど理解できず、「つまり不動産を買えということなのだな」という一点だけ理解できた。
そして会話の途中、棟梁が突然、爬虫類オタクであることをカミングアウトしてきた。
自宅では様々な爬虫類を飼育しており、中でも特筆すべきは“ワニ”である。わざわざ写真まで見せてくれた。
マンションの一室をワニ専用スペースにしているとのこと。
私:「ええっ、こんなに広い部屋、お金かかりませんか?」
棟梁:「他にもペット関係の事業をしているので、何とかやってます」
要するに経済的余裕アピールだったのだろう。だが、私の心は特に動かなかった。
とはいえ、せっかくなので物件を見せてもらうことにした。
第4話:ヤバ物件を見学する
不動産投資に興味があったわけではないが、私は不動産物件を見るのが好きであった。
住みやすさを女性目線で判断できる自信もあった。
期待して訪れた先の物件は、正直いって微妙すぎて驚いた。
- 新築 → これは良い
- 1K、バストイレ別、内装は普通 → 普通
- 駅徒歩12分だが不便な路線 → 微妙
- 線路のすぐ横 → 騒音が気になる
- スーパー徒歩15分、大きな道路を挟んだ先 → 不便
- 夜道が暗い → 危険を感じる
この物件が「ほとんど部屋が埋まっていて、今残っているのはここだけ」と言われたが、まったく響かなかった。
私の反応を察したのか、棟梁はこう言った。
「別に自分が住むわけじゃないんで、大丈夫ですよ」
え?それはつまり微妙さを承知のうえで勧めているのか?
「他にも物件があるので、また見に来てほしい。餃子くんも新しく購入する予定なので、リアルな手続きの流れをお伝えします」と、やる気満々であった。
第5話:営業色が濃くなる
物件の内容に魅力を感じなかった私は、次第に気持ちが冷めていった。
当時はアトピー治療にかなりのお金を使っており、不動産に投資する余裕などなかったのだ。
「医師免許があると信用度が高く、融資が通りやすい」など、役立ちそうな話もあったが、どうしても商談感が強く、心がついていかなかった。
それでも、「次の物件もぜひ見てほしい」と営業トークは続く。
私はそろそろ断るべきだと判断し始めていた。
第6話:脱出劇
内覧した物件があまりに微妙で、もうこれ以上深入りするのはやめようと心に決めた帰り道。
棟梁は車内でこう話し始めた。
「そういえば、物件に保険をつけると、病気や事故などで支払いが困難になった場合に補償が効く制度もあります」
「え、そんな制度があるんですか?」と私が尋ねると、
「はい、そういう仕組みもあります。僕も最近、健康診断に行って、改めて保険の重要性を感じました」
特に問題発言があったわけではないが、なんとなく“軽さ”のようなものを感じてしまい、私は完全に気持ちが離れていった。
最後にもう一度「別の物件もぜひ」と言われたが、丁重にお断りし、そのままフェードアウトする形でこの話は終わった。
おわりに
「自分が住むわけじゃないから大丈夫」──この言葉が今回の体験を象徴しているように思う。
どんなに理屈が通っていても、自分の感覚が拒否するなら、それが正解である。
違和感があるなら、流されずに距離を置く。その大切さを学んだ体験であった。
\ 完 /
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